技能伝承ってどんなこと?
そんな疑問に答える「技術・技能伝承の第五回」です。
☑記事の内容
- 暗黙知を明確にするインタビュー
- 熟練者へとインタビュアーについて
- インタビューの具体的な進め方
私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を10年以上行ってきました。実績を金額に換算すると1億円以上の改善を行なってきたいわゆる改善のプロです。
そんな私が解説します。
暗黙知を明確にするインタビュー
暗黙知の明確化のために熟練者へのインタビューを行っていきます。
暗黙知の第2層、第3層の明確化には熟練者へのインタビューが必要だと「技術・技能伝承の第4回」で説明しました。
その方法について解説をしていきます。
インタビュアーと熟練者の関係性について
インタビュアーは熟練者より技術・技能が劣っている人が適しています特に後継者が良いです。
注意点としては熟練者と同程度のレベルかそれ以上の人は適していません。なぜなら、知識、経験が豊富なため質問の内容に省略が多くなってしまうからです。自身の暗黙知を織り込んだインタビューとなってしまします。
インタビュアーには科学的な根拠、原理、工夫点を明らかにしていく努力、態度が求められます。インタビューを通じて証拠を確かめながら確実に検証する姿勢が大切です。
熟練者にはあらかじめ以下の内容を伝え、インタビューを受ける準備を依頼しておきます。
- 他の作業者や組織に配慮せず自身の作業を語ってもらう
- 普段の作業を丁寧に省略せずに漏らさず話すように努める
- 聞かれたことに分かりやすく語るようにする
- インタビュアーのレベルや考え方に合わせ疑問点が残らないように語る
- イラストや図解、メモなどを活用して語る
インタビューの際に寡黙な作業者の場合はなかなか言葉が続かないといった場合があります。そのような場合などは状況に応じて、作業風景を撮影した画像、動画を活用すると熟練者、インタビュアーとも回答、質問がしやすくなります。
インタビューの具体的な進め方
会場の準備
インタビューは静かな会議室等で行います。現場での確認が必要な場合は適宜現場へ赴きます。
インタビューアーの他に書記役がいるとはかどります。会場にはホワイトボードと動画、画像が確認できるモニター、PCを用意します。
必要に応じて熟練者はホワイトボードに絵や図を描いて説明します。これらの図やインタビューの様子や内容をビデオカメラで撮影しながら進めていきます。
後から見直したり、インタビュー方法のレベルアップなどにつなげるためです。
インタビューについて
- 熟練者による作業全体の流れの説明
- 作業の意義
- 目的
- 到達目標
- 作業の標準時間
- 必要な物品
- 参考事項
- 特に難しい点
- インタビュアーによる質問
- 視覚・聴覚・触覚に関すること
- 動作に関すること
- コミュニケーションに関すること
- 判断に関すること
の流れで進めていきます。
インタビューアーの質問の具体例です。
- 視覚
- 何を見たか
- どこの部分を見たか
- 何を見ようとしたか
- どう見ようとしたか
- 手掛かりは何か
- 聴覚
- 何を聞いたか
- 何を聞こうとしたか
- どう聞こうとしたか
- 手掛かりは何か
- 触覚
- 何を触ったか
- どこの部分を触ったか
- どこで触ったか
- 何を感じようとしたか
- どう感じようとしたか
- 手掛かりは何か
- 動作
- どのように動かしたか
- いつ動かそうとしたか
- どのように動かそうとしたか
- なぜそのように動かしたか
- いつ初めて、いつ止めたか
- 動かし方は何がポイントか
- コミュニケーション
- 何を話したか
- なぜ話したか
- 何を訪ねたか
- 何を判断したか
- 判断
- 何を思い浮かべたか
- 何を決断したか
- 調査している内容は
- 何を検索したか
- 何を手掛かりに診断、判断したか
インタビュアーはインタビューを進行させながら以下のことを行う必要があります。
- 不明確な表現・発言・省略事項を正す
- 定量的な数値、デジタルな表現にしてもらう
- 詳しく言語化する
- 擬音や比喩について理解できるまで確認する
- イラストで説明してもらう
- 疑問点を明確にする
- 不自然と感じる作業について納得できるまで確認する
- 細かな作業についても具体的に説明を受ける
このようにしてインタビューを進めていきます。
まとめ
記事のまとめです。
- 暗黙知の明確化のために熟練者へのインタビューを行う
- インタビュアーは伝承者が望ましい
- インタビューは細かいところまで確認する
- 写真や動画を準備しておくとスムーズに進む
暗黙知の明確化インタビュー方法について解説しました。
一つの作業をインタビューするのに思ったより時間がかかります。しっかりと計画を立ててインタビューを行うようにしましょう。