技能伝承ってどんなこと?
そんな疑問に答える「技術・技能伝承の第一回」です。
☑記事の内容
- 技能・技術伝承とは?
- 技能とは?技術とは?
- 技能・技術伝承の原則
私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を10年以上行ってきました。実績を金額に換算すると1億円以上の改善を行なってきたいわゆる改善のプロです。
そんな私が解説します。
技能・技術伝承とは?
技術・技能伝承とは「すでにある技術・技能を受け継ぐもの」と一般的には考えられています。しかし、それは正しくないのです。
正しい技術・技能伝承は「今ある技術・技能を現代に合わせて作り出すこと」なのです。
なぜなら、時代が進むとともに素材や道具、工具、設備、センサーなどの測定器、画像や動画の活用の敷居の低下など周辺環境が大きく変化しているからです。
このような大きな変化があるのに「すでにある技術・技能を受け継ぐもの」では現状に合致しないといったことが起きてしまいます。
「先人が積み上げてきた技術・技能を軽視してもいいのか?」といっった意見もあると思います。決して軽視するわけではありません。あくまでも、培われた技術・技能をベースに現代に最適な技術・技能に進化させて伝承する必要があるということです。
前向きな進化として「その技術・技能はこれでいいのか?」「より良い技術・技能はないか?」と問いかけながら、より妥当な素材や道具、工具、設備、センサーなどの測定器、画像や動画の活用に置き換え伝承していく必要があるのです。
ですので技術・技能伝承とは「今ある技術・技能を現代に合わせて作り出すこと」と定義することができます。
技能とは?技術とは?
技術と技能をどう考えるか?ということは技術・技能伝承において重要になります。
技術と技能に共通している「技」という文字から考えてみましょう。技とは「ある物事を行うために一定の方法や手段で特に巧みであるもの」とされています。
この技のやり方や方法が「技術」です。技の根拠や仕組み、原理などをのことで「人間の外にあるもの」と定義できます。
一方技能は、技の動きや働きに注目した「言葉」「動作」「運動」「加減」「調整」「手腕」「目視」「判断」「推理」「考え方」といった「人間の内にあるもの」と定義できます。
しかし、実際には技能だけ、技術だけで成り立っている作業や仕事はなく、技術の理解と技能の習得の両立が必要なため「技術・技能」という呼び方をします。
技術・技能伝承に作業や仕事を行動や動作レベルまで分解して必要な技能を明らかにしていくことが必要とされます。
技能・技術伝承の原則
技術・技能伝承の原則です。
- 技術・技能伝承をイベント的に捉えるのではなく、地道な日常業務として取り組む
- 伝承は計画的・組織的に取り組む
- 伝承対象を絞り込む、総花的に実施しない
- 伝承に値する技術・技能かどうかを審議して必要度の高いものから実施する
- 職場で必要な能力リストを作成して、暗黙知の所在を確認する
- 暗黙知の多い技術・技能は明確化して伝承する
このように技術・技能伝承は一担当者で行うものではなく組織的に取り組む必要があります。ある程度以上の組織単位の活動となります。
まとめ
記事のまとめです。
- 技術・技能伝承とは「今ある技術・技能を現代に合わせて作り出すこと」
- 技術・技能は切り離して考えることが難しい
技術・技能伝承を必要とする場面はほとんどの現場であるはずです。○○さんしかできない仕事や作業がある場合はその技術・技能を形式知化する必要があるというとです。
特に、技能は個人に由来する部分が大半ですので、必要になったときに技術・技能伝承を検討し始めても間に合わないことがあります。早めに取り掛かり、日常的に技術・技能伝承に取り組む必要があります。