なぜなぜ分析を取り入れているのだけどうまくいかないな、、、。
もしかしたら分析の途中で「なぜ」を見落としてしまっているのかもしれません。
そんな「なぜ」の見落としを防ぐ方法について解説していきます。
☑️記事の内容
- 【見落とし注意!】なぜなぜ分析で「なぜ」の抜けがなくなる方法 3選
- ベテランがやってしまう失敗 3例とその対処法も
私は自動車メーカーの工場で改善活動の指導を10年以上行ってきました。実績を金額に換算すると1億円以上の改善を行なってきたいわゆる改善のプロです。
そんな私が解説していきます。
【見落とし注意!】なぜなぜ分析で「なぜ」の抜けがなくなる方法 3選
なぜなぜ分析での「なぜ」の抜けを防ぐ方法です。
- 文中の言葉に着目して「なぜ」を出す
- 1つの「なぜ」に要因を2つ以上入れない
- 順序、繋がりを踏まえて「なぜ」を出す
解説していきます。
文中の言葉に着目して「なぜ」を出す
「ボルトが折れた」という事象について分析するとします。
まずは「ボルトが折れた」という言葉に着目します。
「折れた」という言葉に着目して考えると「ボルトの強度を超える力が加わった」(なぜ1)となります。
次は「ボルトの強度」、「力が加わった」という言葉に着目します。
「ボルトの強度」という言葉には「新品時より強度が低下していた」、「ボルトが元々強度が低かった(不良品)」、「要求される強度に対して強度が低かった」(なぜ2)などが考えられます。
「力が加わった」という言葉には「ボルトに引っ張りが加わった」、「ボルトにねじりが加わった」、「ボルトに曲げが加わった」(なぜ2)のような力の種類や「ボルトが脆性破壊さした」、「ボルトが疲労破壊した」(なぜ2)などの力の加わり方などが考えられます。
このように「なぜ」を掘り下げる場合には「事象」や前の「なぜ」の文中に書かれている言葉に着目しながら要因を洗い出していきます。
1つの「なぜ」に要因を2つ以上入れない
なぜなぜ分析を進めているときに「いつもの品番と思っていたから、品番間違いに気がつかなかった」といった「〜〜だから、〜〜になった」形式の「なぜ」が出てくることがあります。
これが1つの「なぜ」に要因が2つ以上入っている状態です。
このまま分析を続けていくと「いつもの品番と思っていたから」の条件でしか分析できなくなってしまいます。
ですので「いつもの品番と思っていた」「品番間違いに気がつかなかった」の二つに分解してかんがえましょう。
ほとんどの場合は「〜〜になった」の「なぜ」に「〜〜だから」に当てはまるはずです。
この場合は「品番間違いにに気がつかなかった」の「なぜ」として「いつもの品番と思っていた」が当てはまります。
その他にも「品番が違うことに気が付きにくかった」、「数字を一つ一つチェックしていなかった」などの見落としていた「なぜ」が出てきます。
順序、繋がりを踏まえて「なぜ」を出す
物事には順序や繋がりが必ずあります。その順序や繋がりを意識して「なぜ」を繰り返す必要があります。
例えば「点検シートに点検結果が記入されていなかった」という事象について考えたみます。
物事の順序を考えていないと、いきなり「作業者は点検することを知らなかった」という「なぜ」が出てきてしまいます。
作業者が点検シートを記入するまでの手順を考えてみると「知る→判断する→実行する」という順序になります。
実行した後で問題が発生したのだから、その順序を逆に遡って分析するべきなのです。
まずは「作業者が点検シートに記入しなかった」という「実行する」に関する要因を洗い出します。
次に続く要因として「作業者は点検シートを記入できなかった」という「判断する」に関する要因を洗い出します。
さらにその次に続く要因として「作業者は点検シートを知らなかった」という「知る」に関する要因を洗い出していきます。
その後、それぞれの「なぜ」において他の「なぜ」が考えられないかを検討していきます。
- 事象 「点検シートが記入されていなかった」(発生した問題)
- ↓
- なぜ1 「作業者が点検シートを記入しなかった」(作業者が実行したことへの要因の洗い出し)
- ↓
- なぜ2 「作業者は点検シートを記入できなかった」(作業者が判断したことへの要因の洗い出し)
- 例)作業者は点検シートを記入できなかった、作業者は点検シートに記入したくなかった、作業者は正しい点検シートに記入できなかった等々
- ↓
- なぜ3 「作業者は点検シートを知らなかった」(作業者が知るということへの要因洗い出し)
- 例)作業者は点検シートを知らなかった、作業者は点検シートを知っていた、作業者は正しい点検シートを知らなかった等々
製品や設備に関するトラブル(事象)も同様で部品の材料や条件など関わっている順序にそって「なぜ」を繰り返していきましょう。
ベテランがやってしまう失敗 3例とその対処法も
現場や職場のベテランがやってしまう失敗と対処方法について解説します。
失敗1 分析前から分析項目を決めて分析してしまう
「ボルトが折れた」という事象に対して着眼点として「ボルトの強度」、「ボルトの材質」、「設備」、「取扱方法」、「設置場所」などをリストアップして分析を始めてしまう場合があります。
項目を決めて分析すると人によるバラツキも起きず、効率的だと思われがちです。
しかし、この方法だと分析は失敗してしまいます。
なぜ失敗するのか
あらかじめ決めた項目で分析してしまうと「ボルトの材質」に対して「安いボルトを使った」、「取扱方法」に対して「力一杯締め付けた」など飛躍した「なぜ」が出てしまい抜けの原因となってしまう。
対処方法
対処方法は分析前に項目を決めないで正しい手順で分析することです。
特に『文中の言葉に着目して「なぜ」を出す』を意識しましょう。
失敗2 見当違いな対策で効果が出ない
「作業者が点検シートを記入しなかった」という事象なぜなぜ分析のを進めて「新人作業者なので点検シートを記入することを知らなかった」で分析が終わってしまう。
この分析結果だと、「新人作業者の教育体制を整備する」や「新人作業者にはコーチをつける」などの見当違いの対策につながってしまいます。
その結果、「新人作業者以外が点検シートを記入しない」場合の事象が発生してしまう可能性があります。
なぜ失敗するのか
分析の「なぜ」に「〜〜だから、〜〜になった」をいれたためです。
これにより「新入社員だから」という前提条件での分析ができずに「なぜ」の抜けが発生してしまったからです。
対処方法
「〜〜だから、〜〜になった」は必ず2つに分解しましょう。
また「なぜ」を考えるときも一つひとつ挙げていくことを意識することも重要です。
失敗3 飛躍した表現をしてしまう
「設備のボルトが折れた」という事象のなぜなぜ分析を進めていくとボルトの強度へかたよったった分析を行なってしまい「ボルトの設計強度が足りない」などの分析結果になった。
ボルトを強度を変更したが「ボルト折れ」の事象が再度発生してしまう。
なぜ失敗するのか
「設備のボルトが折れる」という事象に対して続く「なぜ」で「ボルトの強度が不足している」と飛躍した「なぜ」が出たためです。
「設備のボルトが折れる」という事象には「ボルトの強度」の他にも「ボルトの環境」や「ボルトの材質」、「ボルトの締め付け方法」など関わりのあることがあります。
これらの関わりを意識せずに分析したため「なぜ」の抜けが発生してしまったのです。
対処方法
その事象に関わっている順序に沿って「なぜ」を繰り返していくようにしましょう。
「設備のボルトが折れる」(問題発生)→「設備のボルトが求められている強度を保てない」(破損条件が整う)→「設備のボルトが劣化する」(ボルト材質の変化)→「設備のボルトの状態」(ボルトの状態)
といった具合にボルトを設備に取り付けてから折れるまでの順序をさかのぼって考えることが重要です。
まとめ
まとめです。
- 「なぜ」の見落としを防ぐに『発生した事象から一つ一つ「なぜ」を繰り返すこと』
- そのためには3つのポイントがある
- 文中の言葉に着目して「なぜ」を出す
- 1つの「なぜ」に要因を2つ以上入れてはいけない
- 順序、繋がりを踏まえて「なぜ」を出す
なぜなぜ分析はコツを知っているかどうかで分析の結果が変わります。
モレをなくすために3つのポイントをしっかり守りましょう。